臨床神経学

短報

糖尿病性腎症に対する血液透析療法中に非アルコール性ウェルニッケ脳症を呈した1例

榎本 雪, 守谷 新, 菊地 サエ子, 望月 仁志, 杉浦 嘉泰, 宇川 義一

Corresponding author:福島県立医科大学神経内科学講座〔〒960-1295 福島県福島市光が丘1〕福島県立医科大学神経内科

症例は,慢性腎不全で3年間血液透析をうけている75歳男性である.アルコール多飲はない.ビタミンをふくまない糖質液の点滴後,急速な歩行障害と意識障害を呈した.脳MRIや脳脊髄液に異常が無かったものの,病歴と症候からウェルニッケ脳症がうたがわれたため,直ちにビタミンB1(VB1)の投与を開始し,症候はすみやかに改善した.後に血中VB1の著明な低値が判明し,ウェルニッケ脳症の診断が確定した.血液透析患者や高齢者では,画像所見が正常であっても非アルコール性ウェルニッケ脳症の可能性があることを十分に認識し,些かでも本症がうたがわれた際は,VB1の検査結果を待つことなくすみやかにVB1投与を開始すべきである.
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(臨床神経, 50:409−411, 2010)
key words:ウェルニッケ脳症, 血液透析

(受付日:2009年9月28日)