臨床神経学

短報

高度の嚥下障害を呈したボレリア脳幹脳炎の1例

河野 祐治, 重藤 寛史, 白石 祥理, 大八木 保政, 吉良 潤一

Corresponding author:九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡県福岡市東区馬出3-1-1〕九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科

症例は30歳男性である.嚥下障害,複視,ふらつきにて発症し,吃逆も出現.軽度意識混濁,左側優位の眼瞼下垂,左注視方向性眼振,両側眼輪筋と口輪筋の軽度脱力,体幹失調をみとめた.嚥下反射は著明に亢進し,嚥下困難を呈していた.脳波は間欠性に全般性に高振幅徐波が出現し,脳幹脳炎と考えられた.しかし血算,血液生化学,髄液検査,頭部MRIに異常をみとめなかった.副腎皮質ステロイド剤は吃逆,複視,眼瞼下垂を改善したが,その他の症状に無効.免疫グロブリン療法も無効であった.その後,抗ボレリア抗体陽性が判明し,抗生剤投与にてすみやかに改善した.通常の免疫療法への反応に乏しい脳幹脳炎ではボレリア感染も考慮すべきである.
Full Text of this Article in Japanese PDF (288K)

(臨床神経, 50:265−267, 2010)
key words:ライム病, 嚥下障害, 脳幹脳炎, ボレリア

(受付日:2009年9月15日)