臨床神経学

総説

難治性末梢神経障害の治療の進歩と展望:免疫性ニューロパチーとCrow-Fukase症候群を中心に

桑原 聡

Corresponding author:千葉大学大学院医学研究院神経内科学〔〒260-8670 千葉市中央区亥鼻1-8-1〕千葉大学大学院医学研究院神経内科学

免疫療法の発展によりギラン・バレー症候群(GBS),慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)の治療は確立されたかのようにみえるが,多くの問題点が残されている.GBSでは現在なお死亡例,重度後遺症のみられる症例が一定頻度で存在し,いかに急性期の軸索変性を抑制するかが新たなパラダイムとなっている.CIDPおよび関連疾患である多巣性運動ニューロパチー,抗ミエリン関連糖蛋白抗体にともなうニューロパチーでは病型に応じた治療アストラテジーが必要であり,新規治療としてrituximabへの期待が高まっている.Crow-Fukase症候群はもっとも難治なニューロパチーであったが,近年その治療法は自己末梢血幹細胞移植をともなう大量化学療法,サリドマイド療法へと劇的に変遷している.それぞれの疾患において病態に即した分子標的療法の発展が期待される.
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(臨床神経, 50:219−224, 2010)
key words:ギラン・バレー症候群, 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー, Crow-Fukase症候群, rituximab

(受付日:2009年12月16日)