臨床神経学

症例報告

SOD1L126S遺伝子変異をみとめた高齢発症緩徐進行性の家族性筋萎縮性側索硬化症の1家系例

岩島 とも, 立石 貴久, 山崎 亮, 本村 今日子, 大八木 保政, 吉良 潤一

Corresponding author:九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は80歳と79歳男性の兄弟例である.79歳と76歳発症の緩徐進行性の両下肢脱力を主訴に受診.神経学的には下肢の脱力をみとめたが,上位運動ニューロン徴候,球麻痺症候,呼吸障害はみとめなかった.臨床的には脊髄性進行性筋萎縮症を呈していたが,家族歴をみとめたため,弟に遺伝子検査を施行しSOD1L126S遺伝子変異をみとめた.これまで報告されたSOD1L126S遺伝子変異をともなう家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)では,初発症状は下肢の筋力低下が多く,経過中に上位運動ニューロン徴候は指摘されておらず,本兄弟例も同様の特徴を呈していた.高齢発症緩徐進行性で上位運動ニューロン徴候や球麻痺症状を呈さなくとも,家族性ALSの可能性を考慮する必要がある.
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(臨床神経, 50:163−167, 2010)
key words:家族性筋萎縮性側索硬化症, Cu/Zn superoxide dismutase 1(SOD1)遺伝子, L126S点変異, 高齢発症, 緩徐進行

(受付日:2009年9月28日)