臨床神経学

第51回日本神経学会総会

<Hot Topics 4>
バクロフェン髄腔内投与療法

平 孝臣

東京女子医科大学医学部脳神経外科学講座〔〒162―8666 東京都新宿区河田町8―1〕

バクロフェン髄腔内投与治療(Intrathecal baclofen therapy,ITB)はGABA-B受容体のアゴニストであるバクロフェンを脊髄髄液腔内に持続的に注入し,その他の治療で十分にコントロールできない重症の痙縮を治療するものである.本治療はバクロフェンを脊髄の後角の抑制性神経細胞のみに作用させることが目的であり,経口投与の数百分の1程度の微量の薬剤で強力な効果がえられる.薬剤投与には体内に植え込んだ持続薬液投与ポンプから微量のバクロフェンを脊髄髄液腔内に慢性注入するものであり,精度が高く何年もの長期間にわたって安定して動作する植え込み型ポンプという機器に大きく依存している.このような機器にまつわるトラブルにより離脱症候群などの合併症もまれではなく,注意深いフォローアップ体制が不可欠である.
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(臨床神経, 50:816−819, 2010)
key words:バクロフェン,痙縮,髄腔内投与,ターゲット療法

(受付日:2010年5月20日)