臨床神経学

第51回日本神経学会総会

<楢林賞受賞講演>
新しい抗パーキンソン病薬ゾニサミドの発見

村田 美穂

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院神経内科〔〒187―8511 東京都小平市小川東町4―1―1〕

臨床経験をもとに抗パーキンソン病薬ゾニサミド(ZNS)を開発した.2000年に痙攣発作を併発したパーキンソン病患者にZNSを投与したことをきっかけに,臨床研究,大規模治験を通して,ZNSが抗てんかん薬としての常用量よりもきわめて少ない,25mg1日1回投与で進行期パーキンソン病患者の運動症状を著明に改善し,長期的にも効果を維持することを明らかにし,ZNSは2009年3月抗パーキンソン病薬として承認された.抗パーキンソン効果の作用機序として,チロシン水酸化酵素mRNA発現増加をともなうドパミン合成亢進と中等度のモノアミン酸化酵素阻害作用を明らかにし,T型Caチャネル阻害作用の関与を示唆した.一方,ZNSはグリアおよびニューロンを標的に複数の機序で各種パーキンソンモデルで神経保護効果を呈することを示した.今後,ゾニサミドの神経保護作用について臨床的に検証すること,SNP検索などをもちいて抗パーキンソン効果の個人差の機序を明らかにしていく必要がある.
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(臨床神経, 50:780−782, 2010)
key words:ゾニサミド,パーキンソン病,ドパミン合成,神経保護作用

(受付日:2010年5月20日)