臨床神経学

総説

たこつぼ型心筋症と脳梗塞

加藤 裕司, 武田 英孝, 古屋 大典, 出口 一郎, 棚橋 紀夫

Corresponding author:埼玉医科大学国際医療センター神経内科・脳卒中内科〔〒350-1298 埼玉県日高市山根1397-1〕
埼玉医科大学国際医療センター神経内科・脳卒中内科

たこつぼ型心筋症は,急性心筋梗塞と類似した臨床症状,心電図所見を呈し,心尖部の無収縮と心基部の過収縮にともない,左室造影所見でたこつぼ状の形態をとることを特徴とする.これまで,たこつぼ型心筋症と急性期脳梗塞の合併例は,国内外で30例の報告がある.これらの報告例は,(1)脳梗塞発症により中枢自律神経線維網が障害され,カテコラミンの産生が亢進し,たこつぼ型心筋症にいたる病態と(2)たこつぼ型心筋症にともなう壁運動異常により左室内血栓が形成され,心原性脳塞栓をきたす病態に加え,(3)両者の因果関係の判別困難な病態の3つに大別される.いずれも高齢女性に多い点は共通する.(1)の病態では,中大脳動脈領域と脳底動脈領域の梗塞が多く,たこつぼ型心筋症は無症候性が多かった.(2)の病態では,胸部症状で発症する症例が多かったが,塞栓症を契機にたこつぼ型心筋症の診断にいたる症例もみられた.たこつぼ型心筋症は,急性心筋梗塞との鑑別を要し,脳卒中の原因にも結果にも成りえることから,脳卒中診療の際には留意しなければならない疾患である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (843K) 会員限定

(臨床神経, 49:158−166, 2009)
key words:たこつぼ型心筋症, 脳梗塞, 中枢自律神経線維網, カテコラミン

(受付日:2008年11月17日)