臨床神経学

短報

血清aldolase値の上昇がみられたperifascicular atrophyをともなう非好酸球性筋膜滑膜炎の1例

小野 紘彦, 鈴木 直輝, 水野 秀紀, 竪山 真規, 青木 正志, 糸山 泰人

Corresponding author:東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野〔〒980-8574 宮城県仙台市青葉区星陵町1-1〕
東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野

症例は35歳の男性である.両手の張りとむくみ感で発症し,2カ月の経過で四肢の張りや歩行時の筋痛と関節痛と四肢の筋力低下が進行した.前腕と手は腫脹・発赤し,Raynaud現象と皮膚硬化所見をみとめた.四肢の筋力は軽度低下していた.末梢血中の好酸球増多はなくCKは正常でmyoglobinは軽度上昇していたのに対し,aldolaseは正常上限の約10倍に上昇していた.MRIでは筋膜および滑膜に炎症性変化をみとめた.生検では筋膜および筋周膜とその周囲の筋線維に単核球が浸潤し,筋線維のperifascicular atrophyをみとめた.経口副腎皮質ステロイド薬により1週間でaldolase値は正常化し,臨床症状も徐々に改善した.このような非好酸球性の筋膜滑膜炎の病態はCK正常であることから潜在的に見逃されている可能性がある.aldolaseを測定し,新たな症候群として認識する必要があると考えられた.
Full Text of this Article in Japanese PDF (546K)

(臨床神経, 49:119−122, 2009)
key words:好酸球性筋膜炎, 筋炎, 滑膜炎, アルドラーゼ, 線維束周囲性萎縮

(受付日:2008年8月21日)