臨床神経学

第50回日本神経学会総会

<シンポジウム4―2>アルツハイマー病の診断と治療開発
アルツハイマー病の早期診断マーカーの現状と展望

浦上 克哉, 谷口 美也子

鳥取大学大学院医学系研究科保健学専攻・病態解析学分野〔〒683-8503 米子市西町86〕

アルツハイマー型認知症(AD)は“ありふれた疾患”と位置づけられている.現在ADの根本治療薬の開発が急速な勢いで進展中であり,ADの早期診断マーカーの開発が期待されている.本稿では,ADの早期診断マーカー研究の現状と展望を述べる.ADの早期診断マーカーの役割として2つあると考えられる.より確定診断に役立つもの,スクリーニングに役立つもの2つである.より確定診断に役立つバイオマーカーとして単独では,髄液中リン酸化タウ蛋白の測定がもっとも信頼性が高いと考えられる.スクリーニング検査としてはタッチパネル式コンピューターをもちいた認知症の簡易スクリーニング検査法(物忘れ相談プログラム,日本光電社製)が有用と考えられる.ADの早期診断マーカーの今後の展望として血液で測定可能なものが期待される.われわれのグループはWGA結合トランスフェリンを血液中で測定し,ADとコントロール間で有意差をみとめ,さらにアミロイドβ蛋白より先行する変化であることをみとめた.今後,血液中のバイオマーカーとして期待される.
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(臨床神経, 49:841−844, 2009)
key words:認知症, バイオマーカー, リン酸化タウ蛋白, 物忘れ相談プログラム, WGA結合トランスフェリン

(受付日:2009年5月21日)