臨床神経学

症例報告

側頭部有痛性索状腫瘤を呈し側頭動脈炎との鑑別を要した孤発性神経線維腫の1例

稲盛 真人1), 土井 光1), 立石 貴久1), 松岡 健1)2), 岩城 徹2), 吉良 潤一1)*

Corresponding author:九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
1)九州大学大学院医学研究院神経内科学
2)同 神経病理学

症例は59歳の女性である.数年にわたる右側頭部痛のため当科を受診した.右側頭部に分枝状の圧痛をともなう索状腫瘤を触知し側頭動脈炎をうたがった.しかし,頭部MRIでは右側頭部皮下に多発性の結節を,超音波では低エコー域をともなう血流のない分枝状,索状腫瘤をみとめた.最終的に,腫瘤生検にて右耳介側頭神経に発症した孤発性神経線維腫と診断した.腫瘍は経過観察とし,疼痛は薬物療法にて著明に改善した.頭蓋外皮下組織に孤発性に発生した神経線維腫はまれであり,側頭動脈炎との鑑別や,三叉神経痛様の疼痛の原因として考慮する必要がある.
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(臨床神経, 49:27−31, 2009)
key words:神経線維腫, 三叉神経痛, 側頭動脈炎

(受付日:2008年4月28日)