臨床神経学

症例報告

高齢で筋力低下を発症した球脊髄性筋萎縮症の兄弟例

逸見 祥司1)*, 井上 健2), 久徳 弓子1), 力丸 満恵1), 村上 龍文1), 砂田 芳秀1)

Corresponding author:川崎医科大学神経内科〔〒701-0192 岡山県倉敷市松島577〕
1)川崎医科大学神経内科
2)県立広島病院神経内科

筋力低下の発症年齢が,78歳(兄),66歳(弟)と高齢だった球脊髄性筋萎縮症の兄弟例を経験した.アンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート数はいずれも42リピートと伸長は軽微であった.球脊髄性筋萎縮症の患者は老年期に自力歩行が困難になっているばあいが多いが,本兄弟例は81歳(兄),71歳時(弟)でも歩行障害は軽度に留まっている.弟は,筋力低下の出現に約40年先行して,20歳代よりアンドロゲン不全症状である女性化乳房がみられた.一方,兄には女性化乳房はみられていない.球脊髄性筋萎縮症における筋力低下とアンドロゲン不全症状の発症メカニズムはことなることが推測された.
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(臨床神経, 49:22−26, 2009)
key words:球脊髄性筋萎縮症, アンドロゲン受容体遺伝子, CAGリピート, 筋力低下, アンドロゲン不全症状

(受付日:2008年3月13日)