臨床神経学

総説

ALS研究の最近の進歩:ALSとTDP-43

葛原 茂樹

Corresponding author:国立精神・神経センター病院神経内科〔〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1〕
国立精神・神経センター病院神経内科

筋萎縮性側索硬化症(ALS)では上位と下位の運動ニューロンの選択的傷害が強調されてきた.しかし,近年はALSと,認知症を合併するALS(ALS-D)や前頭側頭葉変性症(FTLD)との病変の連続性が明らかになり,共通の蓄積物としてユビキチン陽性封入体がみいだされた.ユビキチンが結合している蛋白はTAR DNA-binding protein-43(TDP-43)であることが,2006年秋に米日の研究者によってほぼ同時に報告され,ALS研究に大きなインパクトを与えた.ALS,ALS-D,FTLDは蛋白化学的にはリン酸化されたTDP-43が細胞質内,神経突起内,神経核内に蓄積するTDP-43 proteinopathyと見なされる.2008年には家族性ALSの原因遺伝子として,TDP-43遺伝子変異が同定され,ALSとの関連がより強固になった.今後,TDP-43の機能や代謝を明らかにすることにより,ALSの発症機構と分子病態,治療薬研究が飛躍的に発展することが期待される.
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(臨床神経, 48:625−633, 2008)
key words:筋萎縮性側索硬化症(ALS), TDP-43, 前頭側頭葉変性症, ユビキチン, 家族性ALS

(受付日:2008年8月18日)