臨床神経学

症例報告

転移性脳腫瘍との鑑別が問題となったノカルジア脳膿瘍の1例

川上 治, 剣持 順也, 杉浦 真, 加藤 博子, 高木 伸之介, 安藤 哲朗

JA愛知厚生連安城更生病院神経内科〔〒446-8602 愛知県安城市安城町東広畔28番地〕

症例は62歳女性である.入院6カ月前に喀血で発症し,他院で気管支鏡を施行され,腫瘤病変が確認されたが,確定診断がえられなかった.その後,視野狭窄を発症し当院に入院した.検査所見では免疫学的に異常はみとめられなかった.頭部MRIでは周囲の浮腫をともなう均一な増強効果のある多発性腫瘤病変がみとめられた.原発不明癌の転移性脳腫瘍をうたがい,左鎖骨上窩リンパ節生検を施行した.組織診断では悪性所見はなく,膿瘍であった.膿よりノカルジア菌が培養されたことより,ノカルジア脳膿瘍と考えST合剤経口投与を開始したところ,4カ月後には膿瘍は完全に消失した.患者はST合剤を長期服用しているが,とくに再発なく良好な経過である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (692K)

(臨床神経, 48:401−405, 2008)
key words:ノカルジア症, 肺病変, 脳膿瘍, MRI, 化学療法

(受付日:2007年8月24日)