臨床神経学

症例報告

抗グルタミン酸受容体抗体陽性を示した亜急性脳炎の1例:MRI・1H-MRS・SPECTの経時的変化からの検討

山本 司郎1), 小出 泰道1)3), 藤原 美都1), 中澤 健一郎2), 高橋 幸利3), 原 斉1)

1)淀川キリスト教病院脳血管内科〔〒553-0032 大阪市東淀川区淡路2-9-26〕
2)淀川キリスト教病院神経内科
3)国立静岡てんかん・神経医療センター〔〒420-8688 静岡市葵区漆山886〕

症例は32歳男性である.1カ月間,微熱,右後頭部の拍動性頭痛が続いた後,全身強直性痙攣をきたし入院した.頭部MRI-FLAIR画像および拡散強調画像では右側頭後頭葉皮質に高信号域をみとめた.同部位は1H-MRSではN-acetyl-aspartate低下,SPECTでは高集積を呈した.髄液検査では単核球優位の細胞数上昇をみとめ,また,抗グルタミン酸受容体ε2抗体陽性を示した.本症例の予後は良好であり,画像検査でみとめられた異常所見は時間経過とともに正常化した.近年,抗グルタミン酸受容体抗体の関与した脳炎が報告されているが,詳細な画像検査が検討された例は少なく,貴重と考えられたので報告する.
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(臨床神経, 48:196−201, 2008)
key words:脳炎, 抗グルタミン酸受容体抗体, MR spectroscopy, single photon emission CT

(受付日:2007年9月15日)