臨床神経学

第49回日本神経学会総会

<日本神経学会2007年度学会賞受賞者招待講演>
脊髄小脳失調症10型の分子遺伝学的解析

松浦 徹

名古屋大学大学院医学系研究科神経遺伝情報学〔〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65〕

脊髄小脳失調症10型(spinocerebellar ataxia type 10:SCA10)は小脳失調とてんかんを主徴とする優性遺伝性神経変性疾患であり,臨床症状は多様性に富む.その遺伝子変異は,ATXN10遺伝子のイントロン9にあるATTCT5塩基リピートの不安定異常伸長である.5塩基病としてヒト唯一のものであり,リピート病として最大の変異を示すものの一つである.SCA10 ATTCTリピートは,他のリピート病とことなる特有の不安定性を示す.その病態メカニズムは,RNAレベルでおきている可能性が強い.SCA10研究が,病態が依然として明らかでない優性遺伝性非翻訳領域リピート病解明の一助になることを期待している.
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(臨床神経, 48:823−825, 2008)
key words:SCA10, ATTCTリピート, 不安定性, 非翻訳領域リピート病, RNA病態

(受付日:2008年5月15日)