臨床神経学

短報

深在性アスペルギルス症による眼窩尖端症候群にボリコナゾールによる診断的治療が奏効した1例

須貝 章弘, 小宅 睦郎, 梅田 麻衣子, 梅田 能生, 藤田 信也

Corresponding author:長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2085 新潟県長岡市千秋2丁目297番地1〕
長岡赤十字病院神経内科

症例は75歳女性である.発熱と頭痛の後,左外眼筋麻痺と失明をきたした.蝶形骨洞炎と肥厚性硬膜炎をともない,β-Dグルカンが陰性で生検は未施行であったが,深在性アスペルギルス症を想定しボリコナゾール投与を開始した.治療開始後5日目から症状の改善がみられ,血清アスペルギルス抗原陽性が判明した.深在性アスペルギルス症による眼窩尖端症候群の既報告例では,ステロイド投与を先行させたばあい,きわめて予後が悪く致命的になっている症例が多い.ステロイドが奏効する疾患との鑑別も難しいが,確定診断が困難な症例に対してはステロイド投与に先行して抗真菌剤投与による診断的治療を検討すべきと考えられた.
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(臨床神経, 48:746−749, 2008)
key words:眼窩尖端症候群, 深在性アスペルギルス症, ステロイド, ボリコナゾール

(受付日:2008年3月24日)