臨床神経学

短報

長期人工呼吸管理下に気管腕頭動脈瘻からの急性出血で死亡した家族性ALSの1例

加藤 量広, 鈴木 直輝, 青木 正志, 割田 仁, 神 一敬, 糸山 泰人

東北大学病院 神経内科〔〒980-8574 宮城県仙台市青葉区星陵町1-1〕

気管切開孔からの突然の大量出血をきたして死亡し,病理解剖で気管腕頭動脈瘻が明らかとなった家族性筋萎縮性側索硬化症(家族性ALS)の症例を経験した.36歳時にALSを発症し,死亡までの全経過は8年であった.発症4年後に気管切開を施行してから気道出血にいたるまでの期間は4年7カ月であった.剖検では,気道切開孔より尾側の気管粘膜に潰瘍・腕頭動脈との間の瘻孔をみとめた.潰瘍部は気管カニューレの先端が接触していた箇所であった.長期人工呼吸器管理を要する神経筋疾患では定期的に気管カニューレの接触部位を観察し,潰瘍や瘻孔形成を予防することが重要と考えられる.
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(臨床神経, 48:60−62, 2008)
key words:家族性筋萎縮性側索硬化症, SOD1遺伝子, 人工呼吸管理, 気管動脈瘻

(受付日:2007年7月25日)