臨床神経学

症例報告

大脳皮質基底核変性症と臨床診断された非典型的アルツハイマー病の1剖検例

大迫 美穂1), 望月 葉子2)3), 釘尾 由美子1), 水谷 俊雄2), 林 秀明1)

1)東京都立神経病院 脳神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕
2)同 検査科病理診断部門
3)東京都立北療育医療センター 内科

死亡時69歳男性である.60歳時に歩行障害で発症し,着衣失行や左半身の自発的な運動の減少があり,抑うつがみられたが,明らかな記憶障害はなかった.右により高度な大脳萎縮があり,大脳皮質基底核変性症(CBD)と臨床診断された.しかし,病理学的にはアルツハイマー病であった.病変分布はアルツハイマー病としては非定型的で,高度に萎縮した右大脳のなかに頭頂葉に強調された変性があり,さらに,この病変は辺縁系よりも高度であった.このためにCBDの臨床像を呈したと考えられた.まれながら,類似の症例は報告されており,頭頂葉から病変が始まる非定型的なアルツハイマー病例が存在する可能性があると考えられた.

(臨床神経, 47:581−584, 2007)
key words:アルツハイマー病, 大脳皮質基底核変性症, 頭頂葉, 左右差, 神経病理

(受付日:2006年12月4日)