臨床神経学

症例報告

Oromandibular dystoniaによる特異な呼吸困難発作と睡眠時無呼吸を呈したパーキンソン病の1例

加藤 文太, 山田 浩史, 堀内 正浩, 平山 俊和, 長谷川 泰弘

聖マリアンナ医科大学神経内科〔〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1〕

症例は経過約4年のパーキンソン病の79歳女性である.食事や洗濯中にチアノーゼをともなう特異な呼吸困難発作をみとめ入院した.発作は食事やリハビリテーションなどの行為とともに生じ,口輪筋などが異常に緊張することにより呼気が出せず,SpO2は80%台まで低下しチアノーゼを呈した.この発作中に下顎を触れることで口輪筋の緊張が緩和し容易に開口するsensory trickをみとめたことから,その病態はoromandibular dystoniaが考えられた.また本例はpolysomnographyで中枢性睡眠時無呼吸を併発していた.パーキンソン病の呼吸障害の原因として局所性ジストニアと中枢性睡眠時無呼吸の2元的な機序を呈したまれな症例であると考えられた.

(臨床神経, 47:577−580, 2007)
key words:パーキンソン病, ジストニア, 呼吸困難, 睡眠時無呼吸症候群

(受付日:2006年12月3日)