臨床神経学

短報

後下小脳動脈内側枝領域の小梗塞で,めまい・嘔吐・胸内苦悶を呈した1例

細見 明子1)*, 山本 康正1), 濱中 正嗣1), 中川 正法2)

1)京都第二赤十字病院脳神経内科〔〒602-8026 京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355-5〕
2)京都府立医科大学神経内科〔〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465〕
現 同 神経内科

症例は66歳の男性である.めまい,後頭部痛,全身倦怠感で発症し,強い嘔気・嘔吐,胸内苦悶を示した.MRI拡散強調画像で右小脳虫部に散在性の高信号をみとめた.小脳扁桃と虫部小節を主座とする後下小脳動脈内側枝領域内の多発性小梗塞で,脳血管撮影では右側の椎骨動脈V4部のtapered occlusionがみとめられ,これにより後下小脳動脈内側枝への動脈原性塞栓の機序が推察された.扁桃・小節の梗塞で前庭小脳路の障害によりめまい・嘔吐が生じたと推察されるが,MRI拡散強調画像で描出しうる小梗塞巣で激しいめまい・嘔吐が生じた一例で,めまい診断上重要であると考えられた.

(臨床神経, 47:522−525, 2007)
key words:小脳梗塞, めまい, MRI拡散強調画像, 前庭小脳路

(受付日:2007年1月22日)