臨床神経学

症例報告

経過中に脊髄炎症状が増悪しSteroid, Ganciclovirが奏効したEpstein-Barr Virus関連脳脊髄炎の1例

日野 洋健, 上川 将史, 平野 照之, 内野 誠

熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野〔〒860-0811 熊本県熊本市本荘1丁目1番1号〕

症例は,56歳男性である.髄膜炎症状で発症し,発症10日目より傾眠傾向となった.髄液検査で蛋白と細胞数の増加をみとめ,発症25日目より,四肢麻痺,感覚障害,膀胱直腸障害をきたした.MRI検査では,延髄および全脊髄におよぶ病変をみとめ,髄液よりEpstein-Barr virus(EBV)DNAが検出された.神経症状は,Steroid剤にて改善をみとめた.また,抗ウイルス薬としてganciclovirを使用,髄液中のEBV DNAの消失をみとめた.本症例は,臨床経過とMRI所見から,EBVによる炎症にひき続き生じた二次的免疫反応が関与していると考えられた.

(臨床神経, 47:497−501, 2007)
key words:Epstein-Barrウイルス, 脳脊髄炎, Steroid, ganciclovir, 急性散在性脱髄性脳脊髄炎(ADEM)

(受付日:2006年11月30日)