臨床神経学

症例報告

胸腺腫に重症筋無力症,多発筋炎,甲状腺炎と好酸球増多症を合併した1例

井上 学1), 小島 康祐1), 新出 明代2), 里井 斉1), 牧野 ふみ1), 神田 益太郎1), 柴崎 浩1), *

1)医仁会武田総合病院神経内科〔〒601-1495 京都市伏見区石田森南町28-1〕
同 病院顧問
2)関西医科大学神経内科〔〒570-8507 守口市文園町10-15〕

症例は43歳の女性である.四肢筋力の易疲労性で発症し,鼻声,眼瞼下垂,頸部,体幹および四肢近位筋優位の筋力低下をみとめた.血液検査で好酸球,CK, TSH受容体抗体,抗アセチルコリンレセプター抗体の上昇を示し,edrophonium test陽性,誘発筋電図の反復刺激でwaningをみとめた.筋画像で多巣性の炎症所見をみとめ,筋生検でも筋炎をみとめた.以上より,重症筋無力症,多発筋炎,甲状腺炎,好酸球増多症の同時発症と考えた.胸部画像検査で左肺門部腫瘤をみとめ,病理検査でType B1胸腺腫と診断された.胸腺腫摘出と免疫療法にて臨床症状,検査所見とも改善した.とくに本例にみとめられた特異な筋画像の鑑別について考察した.

(臨床神経, 47:423−428, 2007)
key words:胸腺腫, 重症筋無力症, 多発筋炎, 筋MRI

(受付日:2006年12月8日)