臨床神経学

症例報告

注視で誘発される反復性複視発作を呈したocular neuromyotoniaの1例

黒田 昌寿1), 磯崎 英治1), 松原 四郎1), 吉田 寛2), 林 秀明1)

1)東京都立神経病院 脳神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕
2)同 神経眼科

症例は71歳男性である.67歳頃より,毎日数回の複視発作を自覚していた.神経学的所見として,主として左下方注視で誘発される持続約10秒間の左眼上転障害をみとめた.非発作時の眼球運動は正常である.他の神経学的異常所見はないが,非発作時の眼位検査にて,ごく軽度な左上斜筋麻痺がみられた.カルバマゼピンの投与で発作は完全に消失した.以上より,左動眼神経ないし左滑車神経の特発性ocular neuromyotoniaと診断した.本疾患は,一般的に,放射線などによる軽微な末梢神経障害を背景として,注視誘発性の反復性複視発作をきたすまれな疾患である.本例は,特発例としては本邦における初報告例である.

(臨床神経, 47:344−347, 2007)
key words:ocular neuromyotonia, 複視, 斜視, 特発性, カルバマゼピン

(受付日:2007年1月7日)