臨床神経学

症例報告

いわゆる閉眼失行を呈し前頭葉萎縮をみとめた筋萎縮性側索硬化症の1例

福島 隆男, 長谷川 有香, 松原 奈絵, 小池 亮子

独立行政法人国立病院機構 西新潟中央病院神経内科〔〒950-2085 新潟市真砂1丁目14-1〕

症例は57歳女性である.右上肢の筋力低下で発症し,上位運動ニューロン徴候が優位ながら,針筋電図で神経原性変化をみとめ筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断した.発症2年半後から,瞬目など自動閉眼は可能であるが随意的な閉眼が不可能な状態いわゆる閉眼失行を呈し,頭部MRIでは前頭葉の萎縮を,123I-IMP SPECTでは前頭葉の広範な血流低下をみとめた.ALSの中にはまれではあるが,前頭葉の広範な機能低下をきたし閉眼失行などの症状を合併する一群が存在するものと思われる.

(臨床神経, 47:226−230, 2007)
key words:筋萎縮性側索硬化症, 閉眼失行, 前頭葉萎縮, 頭部MRI, 123I-IMP SPECT

(受付日:2007年1月24日)