臨床神経学

症例報告

特発性両側性内頸動脈解離の診断に経口腔頸部血管超音波検査が有用であった1例

森 真由美1), 矢坂 正弘1), 崎間 洋邦1), 湧川 佳幸1), 安森 弘太郎2), 岡田 靖1)

1)国立病院機構九州医療センター 脳血管センター・臨床研究部脳血管内科〔〒810-8563 福岡市中央区地行浜1丁目8番1号〕
2)同 神経放射線科

症例は56歳の男性である.4月某日,外傷・誘因なく,突然の意識障害と左片麻痺を発症した.症状は急速に改善し消失した.MR拡散強調画像で右島皮質に高信号域,MRAで右中大脳動脈水平部遠位側に狭窄をみとめた.翌日のMRAで同病変は消失し,新たに右内頸動脈(ICA)petrous portionに狭窄病変を検出した.脳血管造影検査で,右ICA petrous portionの狭窄病変の改善と両側頭蓋外ICA遠位部の狭窄をみとめた.経口腔頸部血管超音波検査で両側頭蓋外ICA遠位部に偽腔を確認し,本症例を特発性両側ICA解離に基づく動脈原性脳塞栓症と診断した.特発性両側性内頸動脈解離の診断に,経口腔頸部血管超音波検査が有用であった.

(臨床神経, 47:217−221, 2007)
key words:経口腔頸部血管超音波検査, 動脈解離, 内頸動脈, 脳梗塞

(受付日:2006年10月6日)