臨床神経学

症例報告

くりかえす一過性黒内障に血行力学的機序が推定された内頸動脈高度狭窄の1例

中村 麻子1), 矢坂 正弘1), 崎間 洋邦1), 井上 亨2), 安森 弘太郎3), 岡田 靖1)

1)国立病院機構 九州医療センター・脳血管センター臨床研究部 脳血管内科〔〒810-8563 福岡市中央区地行浜1-8-1〕
2)同 脳神経外科
3)同 神経放射線科

症例は高血圧,前立腺肥大を有する74歳の男性である.平成17年4月より,左眼の一過性黒内障をくりかえすために入院した.発作は起立時でのみおこり,起立性低血圧をみとめた.塩酸タムスロシンを中止し,抗血栓療法を開始したところ,起立性低血圧は消失し,発作回数は激減した.脳血管撮影検査にて左内頸動脈にNASCET 95%の高度狭窄と前交通動脈を介する左中大脳動脈への側副血行をみとめた.左眼動脈の血流は逆行性であった.内頸動脈高度狭窄症にともなう血行力学的な機序で頻発した一過性黒内障と考えられた.内頸動脈内膜剥離術後,症状は完全に消失した.

(臨床神経, 47:147−150, 2007)
key words:内頸動脈狭窄症, 一過性黒内障, 血行力学的, 起立性低血圧

(受付日:2006年1月30日)