臨床神経学

原著

筋萎縮性側索硬化症の進展様式〜呼吸症状出現時正常に保持された四肢・球機能の検討〜

木村 文治, 藤村 智恵子, 石田 志門, 細川 隆史, 佐藤 智彦, 中嶋 秀人, 古玉 大介, 杉野 正一

大阪医科大学 第一内科 神経内科〔〒569-8686 大阪府高槻市大学町2-7〕

ALSの呼吸症状出現までの進展様式を検討した.対象は孤発性ALS120例である.呼吸症状出現時に正常運動機能を有したのは43例47部位であった.その内訳は球32部位,下肢12部位,上肢3部位である.球初発で呼吸症状出現時正常運動機能保持例(14%)は四肢初発(43%)に比し有意に低かった.呼吸症状出現時に球機能異常群88例と正常群32例の罹病期間,臨床特性に差はなかった.人工呼吸器装着率は正常運動機能保持患者で高かった(p=0.03).呼吸症状出現時に球機能正常例は1/4あり,球症状を目安とした人工呼吸器装着に対する段階的告知に注意が必要である.上肢機能は呼吸症状出現時に正常に保持される率は有意に低く,頸髄病変による横隔膜の運動障害が呼吸症状進展に関連する.

(臨床神経, 47:140−146, 2007)
key words:ALS機能評価スケール, 人工呼吸器装着, 呼吸症状, 球症状, 頸髄病変

(受付日:2006年9月8日)