臨床神経学

症例報告

多発性脳神経障害にて発症した肥厚性脳硬膜炎をともなうWegener肉芽腫症の1例

櫻澤 誠1), 勝又 俊弥1), 功刀 しのぶ2), 桂 研一郎1), 坂本 静樹1), 片山 泰朗1)

1)日本医科大学付属病院第2内科〔〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5〕
2)日本医科大学付属病院病理学第1教室

患者は41歳男性である.2001年3月某日,左眼痛,頭痛,両側視力低下および左外転神経麻痺出現.ステロイド投与で著明に改善.同年5月某日に全身強直性痙攣出現した.その2週間後に2回目の痙攣の出現後より左前額部の疼痛,左II,III,IV,V,VIの障害をみとめた.頭部MRIで左前頭部に造影される硬膜をみとめ,肥厚性脳硬膜炎と診断しステロイド投与したところ,症状の著明な改善をみとめた.2002年7月より反復性鼻出血が出現したため,上咽頭粘膜生検施行し,巨細胞をともなう壊死性肉芽腫性炎をみとめ,さらにPR-3 ANCA陽性からWegener肉芽腫症と診断した.多発性脳神経障害にて発症し,肥厚性脳硬膜炎を呈する患者についてはWegener肉芽腫症も考慮に入れ経過観察が必要と考えられた.

(臨床神経, 47:85−89, 2007)
key words:Wegener肉芽腫症, 肥厚性脳硬膜炎, 多発性脳神経障害, PR-3 ANCA

(受付日:2006年5月30日)