臨床神経学

短報

MRI拡散強調像で著明な白質病変を呈した橋本脳症の1例

岡本 憲省, 森 千晃, 鴨川 賢二, 冨永 佳代, 奥田 文悟

愛媛県立中央病院 神経内科〔〒790-0024 愛媛県松山市春日町83番地〕
現 国立病院機構 愛媛病院 神経内科

症例は65歳女性である.亜急性に記銘力障害,見当識障害が進行して,頭部CTで大脳白質にびまん性の低信号域がみとめられたため当科に入院した.大脳白質病変はMRI拡散強調像では高信号を呈していた.血清TSHならびに甲状腺機能は正常であったが,抗TG抗体,抗TPO抗体が陽性であった.その他の痴呆性疾患を示唆する異常所見がみられないため,橋本脳症がうたがわれた.ステロイドホルモンの投与により,認知機能の著明な改善と大脳白質の異常信号の消退がみとめられた.橋本脳症においても,白質脳症類似の認知機能障害と画像所見を呈することは留意すべきである.

(臨床神経, 47:112−115, 2007)
key words:橋本脳症, 拡散強調像, 認知機能障害, MRI, 白質脳症

(受付日:2006年8月21日)