臨床神経学

症例報告

「首下がり」を呈した甲状腺機能低下症の1例

古谷 力也, 石原 健司, 宮澤 由美, 鈴木 義夫, 塩田 純一, 河村 満

汐田総合病院神経内科〔〒230-0001 横浜市鶴見区矢向1-6-20〕
現 昭和大学神経内科

症例は50歳の男性である.首が前に傾いてしまうため当科を受診した.頸部伸筋群に限局した筋腫大,筋力低下をみとめ,また両上肢でmounding現象をみとめた.腱反射は四肢で低下ないし消失していた.血液検査所見では各種筋逸脱酵素の上昇,高脂血症,甲状腺機能低下をみとめた.頸部MRIで頸部伸筋群の腫大とT2高信号をみとめ,筋生検では筋線維の大小不同およびタイプ2線維の軽度萎縮をみとめた.以上より甲状腺機能低下症性ミオパチーによる「首下がり」と考え,甲状腺ホルモン補充療法をおこなったところ,頭部挙上が可能となり,血液検査および頸部MRI所見も改善した.「首下がり」の鑑別診断として,甲状腺機能低下症を考える必要がある.

(臨床神経, 47:32−36, 2007)
key words:「首下がり」, 甲状腺機能低下症, 頸部伸筋群, 筋腫大

(受付日:2006年6月21日)