臨床神経学

症例報告

軸索機能障害の関与が考えられる高血糖性“脱髄性”末梢神経障害の1例

寺澤 由佳, 野寺 裕之, 佐藤 健太, 中根 俊成, 和泉 唯信, 梶 龍兒

徳島大学 神経内科〔〒770-8503 徳島県徳島市蔵本町3-18-15〕
現 川崎医科大学 脳卒中医学教室〔〒701-0192 岡山県倉敷市松島577〕

症例は66歳女性である.全身性エリテマトーデス(SLE)に対しステロイド開始2カ月後に,両下肢のしびれと歩行困難を生じた.血液検査にて高血糖があり,運動神経および感覚神経の伝導速度の低下をみとめた.SLEの増悪はなかった.血糖コントロールにより約1週間で伝導速度の低下はすみやかに改善し,高血糖性ニューロパチーと診断した.すみやかな伝導速度の改善は髄鞘再生では説明できず,今回の神経伝導検査での“脱髄”の所見は器質的脱髄ではなく機能的軸索障害であったと考えた.

(臨床神経, 46:540−543, 2006)
key words:糖尿病性神経障害, 高血糖性ニューロパチー, 機能的伝導障害, Na-Kポンプ

(受付日:2006年3月30日)