臨床神経学

短報

左上中側頭回から外側後頭回梗塞による失読失書の1例

栗山 長門1)*, 鈴木 則夫2), 松田 実2)

1)国立滋賀病院神経内科〔〒527-8505 滋賀県東近江市五智町255〕
2)滋賀県立成人病センター第3内科(老年神経内科)
現 京都府立医科大学大学院医学研究科神経病態制御学〔〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465〕

近年,PETをもちいた読みの賦活実験で,従来読み書きに重要な役割を担うとされてきた角回の賦活をみとめないという研究結果が出されており,臨床面からの再検討が必要である.今回,われわれは,失読失書の責任病巣とされてきた左角回に生じた脳梗塞で読み書き障害を呈さず,左外後頭回に生じた再梗塞にて仮名主体の古典的失読失書を呈した症例を経験した.日本語の仮名読みに関しては,後頭回の重要性を指摘する報告があり,本例の経過はこれを支持すると考えられた.

(臨床神経, 46:505−509, 2006)
key words:失読失書, 脳梗塞, 外後頭回, 角回

(受付日:2005年11月7日)