臨床神経学

短報

何を食べてもすごく甘い:肺癌によるSIADHで生じた特異な味覚異常

中里 良彦, 阿部 達哉, 田村 直俊, 島津 邦男

埼玉医科大学 神経内科〔〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38〕

症例は56歳女性である.「何を食べてもすごく甘く感じる」という主訴で来院した.低Na血症(血清Na値113 mmol/L)をみとめた.味覚異常は血清Na値の正常化と共に消失し,Na値が低下すると再発した.大細胞肺癌が確認され,肺癌によるSIADHと診断した.強力な甘味を惹起する味覚修飾物質のひとつとしてmiraculinが知られているが,本病態の発症に未知の味覚修飾物質が関与している可能性を考察した.

(臨床神経, 46:418−420, 2006)
key words:味覚異常, 肺癌, 抗利尿ホルモン分泌不均衡症候群(SIADH), ミラクリン

(受付日:2005年10月14日)