臨床神経学

短報

左被殻出血により両側性味覚障害をきたした1例

伊藤 恒1), 伊東 秀文1), 田中 伸子1), 朝山 真哉1)2), 中野 智1), 日下 博文1)

1)関西医科大学神経内科〔〒850-0027 大阪府守口市文園町10-15〕
2)北野病院神経内科〔〒530-8480 大阪市北区扇町2-4-20〕

左被殻の単独出血病変によって両側舌に味覚障害を呈した39歳男性例を報告した.軽度の右中枢性顔面神経麻痺と右上肢麻痺をともない,頭部MRIにて左被殻出血と島皮質におよぶ浮腫がみとめられた.味覚の伝導路には未解明な点が多いが,本例でみられた所見は,舌の両側からの味覚情報は左島皮質に投射するとしたPritchardらの説を支持するものと考えられた.

(臨床神経, 46:288−290, 2006)
key words:味覚障害, 被殻, 島皮質, 脳血管障害

(受付日:2005年7月21日)