臨床神経学

症例報告

バセドウ病にともなう第VIII因子活性亢進により脳静脈洞血栓症をきたした若年男性の1例

春日 健作1), 成瀬 聡1), 梅田 麻衣子1), 田中 みどり2), 藤田 信也1)

1)長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2085 長岡市寺島町297-1〕
2)同 内分泌内科

症例は38歳男性である.くりかえす頭痛の後,意識障害,失語,右片麻痺をきたし,上矢状静脈洞から両側横静脈洞にいたる脳静脈洞血栓症(cerebral venous thrombosis;CVT)と診断された.入院時にはじめてバセドウ病に気づかれ,第VIII因子活性が著明に亢進しており,発症の原因と考えられた.抗凝固療法に加えバセドウ病に対する治療をおこない,甲状腺機能の改善にともない第VIII因子活性も改善し,良好な経過がえられた.原因不明のCVTにおいて,第VIII因子の上昇をともなった甲状腺機能亢進症を念頭におくことが重要と考えられた.

(臨床神経, 46:270−273, 2006)
key words:脳静脈洞血栓症, 甲状腺機能亢進症, バセドウ病, 第VIII因子

(受付日:2005年10月18日)