臨床神経学

症例報告

脳内に多発結節性病変を呈したX連鎖リンパ増殖性疾患(XLP)の1例

立石 貴久1)*, 田中 公裕1), 伊藤 能清2), 光尾 邦彦1)

1)独立行政法人国立病院機構 別府医療センター 神経内科〔〒874-0011 大分県別府市内竃1473〕
2)同 血液内科
現 九州大学大学院医学研究院附属脳神経病研究施設 神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

脳内に多発結節性病変を呈したX連鎖リンパ増殖性疾患(XLP)の1例を報告した.症例は21歳男性,微熱,頭痛,ものわすれのため受診した.髄液検査では細胞数と蛋白の増加,MRIでは両側前頭葉,左側頭葉,および両側海馬に多発性造影病変をみとめた.肺内にも多発結節影をみとめたため肺生検をおこなったところ,血管内悪性リンパ腫やリンパ腫様肉芽腫症は否定的であり,lymphoid vasculitisと診断した.ステロイド治療にて臨床症状,髄液,頭部MRI,胸部CT所見のいずれも改善した.XLPにともなうlymphoid vasculitisの報告は数例しかなく確立された治療法もないが,自験例ではステロイド治療が有効と考えられた.

(臨床神経, 46:254−260, 2006)
key words:X連鎖リンパ増殖性疾患, 頭部MRI, 胸部CT, lymphoid vasculitis, 血球貧食症候群

(受付日:2005年3月31日)