臨床神経学

症例報告

痙攣発作で発症し側頭葉内側面に限局した痙攣後脳浮腫を呈した1症例―非ヘルペス性急性辺縁系脳炎との関連について―

三隅 洋平, 平野 照之, 松本 典子, 山下 太郎, 宇山 英一郎, 内野 誠

熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野
現:大牟田天領病院神経内科〔〒836-8566 福岡県大牟田市天領町1丁目100番地〕

痙攣発作と健忘症状で発症し,MRIにて片側側頭葉内側面に限局した腫大とT2強調画像高信号を呈した1症例を経験した.脳腫瘍との鑑別が困難であったため十分な説明をおこない同意をえて脳生検を施行したが脳生検組織は脳浮腫の所見のみで,痙攣後に二次的に生じた脳浮腫と考えられた.近年,我が国で非ヘルペス性急性辺縁系脳炎(non-herpetic acute limbic encephalitis:NHALE)の報告例が増加しているが,痙攣発作で発症して側頭葉内側面に異常陰影を呈した症例の一部には,痙攣後に二次的に生じた脳浮腫がふくまれている可能性が示唆された.

(臨床神経, 46:214−217, 2006)
key words:脳浮腫, 痙攣, 記憶障害, 辺縁系脳炎, MRI

(受付日:2005年6月24日)