臨床神経学

症例報告

慢性炎症性脱髄性多発神経炎型の末梢神経障害で発症し経過中に全身性ループスエリテマトーデスとシェーグレン症候群を併発した1症例

波田野 琢1), 福田 もも1), 塩月 寛美1), 三輪 英人2), 卜部 貴夫1), 水野 美邦1)

1)順天堂大学 脳神経内科〔〒113-8421 東京都文京区本郷2-1-1〕
2)和歌山県立医科大学 神経内科

症例は60歳の男性である.感覚性運動失調で発症し緩解増悪をくりかえしchronic inflammatory demyelinating polyneuropathy(CIDP)と診断したが,経過中にsystemic lupus erythematosus(SLE)とSjögren syndrome(SS)を併発した.SLEの増悪とともに神経症状が悪化しステロイドパルス,血漿交換,大量γグロブリン療法で改善した.SLEや乾燥症状のみ呈するSSでまれにCIDPが合併する事が報告されている.本症例はこれらの膠原病による免疫学的機序でCIDP類似の末梢神経障害をきたした可能性が示唆された.

(臨床神経, 46:203−209, 2006)
key words:慢性炎症性脱髄性神経炎, 全身性エリテマトーデス, シェーグレン症候群, 感覚障害性失調症状, 抗核抗体

(受付日:2005年4月25日)