臨床神経学

第47回日本神経学会総会

<シンポジウム4-1>本邦における視神経脊髄型多発性硬化症
多発性硬化症の疫学と動向―視神経脊髄型多発性硬化症を中心として―

吉良 潤一

九州大学神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

2004年に実施された多発性硬化症(MS)全国臨床疫学調査結果を,過去3回の調査結果(1972年,1982年,1989年)と比較した.これにより,MS推定患者数の著明な増加,発症年齢ピークの若年化,高度の視神経・脊髄障害の減少が明らかとなった.3椎体以上の長大な脊髄病変を有する視神経脊髄型MSは,通常型MSとくらべ有意に高齢発症で,女性の比率が高く,総合障害度(EDSS)も高く,罹病期間と障害度は有意な相関を示さず,二次性進行型の比率も有意に少ないなどユニークな病像を呈した.長大な脊髄病巣を呈するMSや膠原病を合併するMSは重症化しやすく,インターフェロンベータで増悪する頻度も高い可能性があり注意が必要である.

(臨床神経, 46:859−862, 2006)
key words:多発性硬化症, 全国臨床疫学調査, 視神経脊髄型

(受付日:2006年5月12日)