臨床神経学

短報

腸球菌性髄膜炎を併発した,HTLV-1キャリアーにともなう糞線虫症の1例

杉浦 明1), 藤本 正也1), 齋田 康彦2)

1)磐田市立総合病院神経内科〔〒438-8550 静岡県磐田市大久保512-3〕
2)同 消化器科

症例は40歳の日系ブラジル人男性である.16年前に来日した.4年前に糞線虫症の治療歴がある.頭痛と発熱を主訴に当科へ入院した.項部硬直,炎症反応高値,抗HTLV-1抗体陽性をみとめた.髄液検査では好中球優位の細胞増加,髄液培養ではEnterococcus faecalisをみとめ,腸球菌性髄膜炎と診断した.ampicillinとceftriaxoneの投与によって,髄膜炎は治癒した.腹部造影CTでは,十二指腸から空腸上部にかけて造影効果をともなう壁肥厚と液貯留をみとめた.便,十二指腸液,十二指腸粘膜より糞線虫が検出され,糞線虫の持続感染が判明した.ivermectinの投与によって,糞線虫症は治癒した.糞線虫が播種した際に腸管内の腸球菌が血液中に侵入し,血行感染によって髄膜炎を発症したと考えた.

(臨床神経, 46:715−717, 2006)
key words:細菌性髄膜炎, 腸球菌, 糞線虫症, HTLV-1

(受付日:2006年3月9日)