臨床神経学

短報

高度の精神発達遅滞を呈したBecker型筋ジストロフィーの4兄弟例

二村 直伸, 河本 邦彦, 高橋 桂一, 舟川 格, 陣内 研二

独立行政法人国立病院機構 兵庫中央病院 神経内科〔〒669-1592 兵庫県三田市大原1314〕

発端者は33歳の男性である.3歳時に精神発達遅滞を指摘され,16歳時にてんかんを発症した.23歳時に高CK血症を指摘されたが,筋力は正常であった.知能は,対人関係,言語能力が4カ月程度と高度の遅滞を呈した.弟3人も筋力が正常であるにもかかわらず高度の精神発達遅滞と高CK血症があり,うち2人にはてんかんがあった.発端者の下腿に偽性肥大があり,ジストロフィン遺伝子検査で4兄弟全員にエクソン4の欠失をみとめた.Becker型筋ジストロフィーで,筋症状が臨床的にも病理学的にも軽症であるにもかかわらず,高度の精神発達遅滞を呈したまれな1家系と考えられた.

(臨床神経, 46:62−65, 2006)
key words:ベッカー型筋ジストロフィー, 精神発達遅滞, 自閉症, エクソン4, ジストロフィン

(受付日:2005年1月21日)