臨床神経学

症例報告

垂直性共同視麻痺を呈した両側延髄内側梗塞の1例

軸丸 美香1), 増田 曜章1), 上山 秀嗣1), 三宮 邦裕1)*, 熊本 俊秀1)

1)大分大学医学部脳・神経機能統御講座(内科学第三)〔〒879-5593 大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1〕
現 長門記念病院神経内科〔〒876-0835 大分県佐伯市鶴岡町1-11-59〕

症例は79歳の男性である.四肢のしびれ,麻痺および構音障害を生じ,その後呼吸が停止し,人工呼吸器管理を要した.人工呼吸器離脱後の神経所見では,垂直性共同視麻痺,左中枢性顔面神経麻痺,四肢麻痺がみられた.頭部MRIでは両側延髄内側に梗塞巣をみとめた.過去の同様の報告例をふくめた検討により,延髄における垂直性共同視麻痺の責任病巣として,傍正中経路(paramedian tract)をふくむ病変が考えられた.一般に垂直性眼球運動の注視中枢は中脳のriMLF,後交連やCajal核といわれており,延髄病変で垂直性共同視麻痺をきたした症例の報告はきわめてまれである.

(臨床神経, 46:45−49, 2006)
key words:延髄内側梗塞, 垂直性共同視麻痺, 傍正中経路, 前庭神経核

(受付日:2005年2月21日)