臨床神経学

症例報告

多発性脳梗塞を呈した若年女性の脳底動脈fibromuscular dysplasiaの1例

田代 研之, 重藤 寛史, 田中 正人, 川尻 真和, 谷脇 考恭, 吉良 潤一

九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

症例は20歳女性である.意識障害,右片麻痺を呈し,神経学的には左眼の散瞳・対光反射消失・角膜反射消失,左上同名1/4盲もともなっていた.頭部CT・MRIにて右後頭葉内側,両側視床,中脳左側,橋底部左側に病巣をみとめた.血管造影にて脳底動脈に念珠状の変化をみとめ,fibromuscular dysplasia(FMD)による脳梗塞と診断した.2カ月後には,ごく軽度の右片麻痺,左上同名1/4盲を残すのみとなった.FMDでは,内頸動脈や椎骨動脈が障害されやすく,脳底動脈が障害されることは非常にまれであるが,若年性脳梗塞の鑑別診断として考慮する必要がある.

(臨床神経, 46:35−39, 2006)
key words:fibromuscular dysplasia, 脳底動脈, 脳梗塞, 若年成人, 抗血小板療法

(受付日:2005年1月16日)