臨床神経学

短報

胸椎レベルの複数箇所から髄液漏出がみられた特発性低髄液圧症候群

荒井 元美1), 高田 知季2)

1)聖隷三方原病院神経内科〔〒433-8558 静岡県浜松市三方原町3453〕
2)同 麻酔科

特発性低髄液圧症候群の54歳,男性例を報告した.起立時の激しい頭痛と聴覚障害で発症した.頭部MRIでは硬膜がガドリニウムによりびまん性に造影され,脊椎MRIでは上部胸椎領域に少量の硬膜外液体貯留がみられた.脳槽シンチグラフィーで,Th2およびTh7椎体レベル左側とTh3からTh5椎体レベルにかけての右側に髄液漏出が検出された.保存的治療は無効であったが,Th5/6などで硬膜外自家血注入を計4回おこない症状は消失した.髄液漏出部位が複数箇所あるばあいも,漏出部位あたり少なくとも2回は硬膜外自家血注入をおこなってみる必要があると思われる.

(臨床神経, 45:679−681, 2005)
key words:特発性低髄液圧症候群, 髄液漏出, 硬膜外自家血注入

(受付日:2005年2月26日)