臨床神経学

症例報告

1H-MRS上脳腫瘍との鑑別が困難であった特発性CD4+リンパ球減少症にともなう進行性多巣性白質脳症の1例

国分 則人1), 石原 哲也2), 西林 百佳1), 池田 俊一郎3), 長嶋 和郎4), 平田 幸一1)

1)獨協医大神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕
2)総合南東北病院脳卒中・神経センター神経内科〔〒963-8563 福島県郡山市八山田7丁目115〕
3)池田脳神経外科〔〒322-0026 栃木県鹿沼市茂呂2027〕
4)北海道大学分子細胞病理学教室〔〒060-8638 北海道札幌市北区北15条西7丁目〕

proton MR spectroscopy(1H-MRS)にて脳腫瘍類似の所見を呈した特発性CD4+リンパ球減少症にともなう進行性多巣性白質脳症(PML)の一例を報告した.症例は61歳男性,進行性の痴呆と左片麻痺を呈し,MRI上右深部白質にT2強調像にて高信号の病変をみとめたため,1H-MRSが施行された.1H-MRSではNAAの著明な低下と,Choの増加およびLactate peakをみとめたため,低悪性度星細胞腫がうたがわれた.脳生検をおこなったが腫瘍細胞はみとめられず,JC virusの感染が確認されたためPMLと診断した.AIDSをともなわないPMLはまれであり,また本症の1H-MRS所見の報告は少ない.このような例では鑑別診断に注意を要する.

(臨床神経, 45:663−668, 2005)
key words:進行性多巣性白質脳症, 特発性CD4+リンパ球減少症, MRI, 1H-MRS, 神経膠腫

(受付日:2004年12月6日)