臨床神経学

症例報告

抗グルタミン酸受容体δ2,ε2抗体をみとめた非ヘルペス性脳炎の1例

林 祐一1), 松山 善次郎1), 高橋 幸利2), 脇田 賢治1), 橋爪 龍磨1), 木村 暁夫1), 保住 功1), 村瀬 全彦3), 犬塚 貴1)

1)岐阜大学大学院医学研究科 神経統御学講座 神経内科・老年学分野〔〒501-1194 岐阜県岐阜市柳戸1-1〕
2)国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部・小児科〔〒420-8688 静岡県静岡市葵区漆山886〕
3)羽島市民病院 神経内科〔〒501-6206 岐阜県羽島市新生町3丁目246〕

症例は45歳女性で,発熱,意識障害,全身性けいれんを主訴に来院した.症状,経過,検査所見から非ヘルペス性脳炎と診断し,ステロイドパルス療法をおこない,意識障害や自律神経障害が急速に改善した.後遺症として,全身性けいれんと約8年間の逆行性健忘と前向性健忘をみとめた.最近,非ヘルペス性脳炎の背景には何らかの感染あるいは感染にともなう自己免疫的機序が想定されており,抗グルタミン酸受容体(GLUR)ε2抗体や抗VGKC抗体の関与が報告されている.本例では,抗GluRδ2およびε2 IgM型自己抗体が髄液,血清中で陽性で,経過とともに髄液中のIgM抗体が陰転化した.本例は,MRIで明瞭な病変を示しており,このような画像所見を呈し,抗GluRε2,δ2抗体陽性であった非ヘルペス性脳炎ははじめてであり報告する.

(臨床神経, 45:657−662, 2005)
key words:抗GluRδ2抗体, 抗GluRε2抗体, 非ヘルペス性脳炎, てんかん, ステロイドパルス療法

(受付日:2004年11月4日)