臨床神経学

症例報告

Midazolam・propofol併用による抗筋痙攣療法をおこなった重症破傷風の1例

上川 将史1), 渡邉 聖樹1), 平野 照之1), 米満 弘一郎2), 木下 順弘2), 内野 誠1)

1)熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野〔〒860-0811 熊本市本荘1-1-1〕
2)同 集中治療部

明らかな外傷歴のない68歳女性が2004年5月1日後頸部痛を自覚した.3日嚥下が困難となり,4日開口障害が加わった.11日後弓反張出現し呼吸不全となったため,12日気管内挿管のうえ,人工呼吸管理が開始された.midazolam 5 mg/hr,PIPC 6 gによる加療を開始し,抗破傷風免疫グロブリン3,000 IU,破傷風トキソイドを投与した.17病日気管切開術施行.midazolamを13 mg/hrまで増量するも後弓反張が断続的に出現し,vecuroniumの間欠投与の併用でも,筋痙攣が改善しないため,21病日propofol 30 mg/hrの併用を開始した.70 mg/hrまで増量し後弓反張をふくめた筋痙攣および血圧の変動に改善がみられた.筋痙攣,呼吸状態の改善にともない両剤ともに徐々に減量し,47病日にpropofol,53病日にmidazolamを中止することができた.midazolamのみでは筋痙攣のコントロールが困難になりpropofolの併用により良好なコントロールがえられた.破傷風における筋痙攣の治療に際してはmidazolam・propofol併用も選択肢になりうると考えられた.

(臨床神経, 45:506−509, 2005)
key words:破傷風, ミダゾラム, プロプォフォール, 抗筋痙攣療法

(受付日:2004年10月29日)