臨床神経学

短報

メトロニダゾール誘発性可逆性急性小脳失調の1例のMRIとSPECT所見

高瀬 敬一郎, 三田 洋, 大田 純夫, 由村 健夫

社会保険下関厚生病院脳神経センター脳神経内科〔〒750-0031 山口県下関市上新地町3-3-8〕

症例は69歳男性である.2003年10月からアメーバ赤痢に対して1日1,500 mgのメトロニダゾールを投与された.12月末から悪心嘔吐,構音障害,嚥下障害,歩行失調が急性に発症した.神経学的には嚥下障害,失調性発語,左上下肢失調と体幹失調,四肢腱反射亢進,四肢末梢の異常感覚と全感覚低下をみとめた.脳MRIにて両側小脳歯状核に一致して造影効果のないT2高信号域をみとめた.症状のより強い左が大きく,脳SPECTでも左小脳半球の血流低下をみとめた.メトロニダゾールによる小脳脳幹障害,末梢神経障害と診断し即日服薬中止.小脳脳幹障害,MRI所見は約1カ月で全快し,メトロニダゾールによる中枢神経障害は可逆性の機能低下と考えられた.一方末梢神経は軸索変性であり,薬剤中止後も改善は明らかではなかった.本邦では初の報告例であり,SPECTの所見はいままで知られていない.

(臨床神経, 45:386−389, 2005)
key words:メトロニダゾール, 小脳失調, 末梢神経障害, MRI, SPECT

(受付日:2004年8月18日)