臨床神経学

症例報告

コイル塞栓術を施行した外傷性頭蓋外椎骨動脈解離の1例

松浦 大輔1)2), 稲富 雄一郎1), 佐枝 浩子1), 米原 敏郎1), 藤岡 正導1), 甲斐 豊3), 濱田 潤一郎3), 橋本 洋一郎4), 平野 照之5), 内野 誠5)

1)済生会熊本病院 脳卒中センター〔〒861-4193 熊本県熊本市近見5丁目3番1号〕
2)現 脳神経センター大田記念病院 脳神経内科〔〒720-0825 広島県福山市沖野上町3-6-28〕
3)熊本大学大学院脳神経科学講座脳神経外科
4)熊本市立熊本市民病院 神経内科
5)熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野

症例は37歳男性である.頸部痛が先行し,めまい・構音障害・左上下肢の脱力をきたした.MRIで右上小脳動脈領域梗塞をみとめ,また頸部血管エコーで右椎骨動脈はV2(第4〜6頸椎レベル)においてdouble lumenを呈した.脳血管造影では同部位の壁不整と,右上小脳動脈閉塞の所見をみとめ,右椎骨動脈解離による動脈原性脳塞栓症と診断した.抗凝固療法を開始したが,経過中TIA症状がくりかえし出現し,また解離の進行が確認されたため,右椎骨動脈にコイル塞栓術を施行した.以後脳梗塞再発はなく,神経症候も軽快した.保存的治療が無効な頭蓋外椎骨動脈解離に対し,血管内治療は有効な治療手段となりうる.

(臨床神経, 45:298−303, 2005)
key words:頭蓋外椎骨動脈解離, 脳梗塞, 血管内治療, コイル塞栓術

(受付日:2004年4月20日)