臨床神経学

原著

急性期脳梗塞における安静度拡大

本田 省二1), 稲富 雄一郎1), 米原 敏郎1), 藤岡 正導1), 橋本 洋一郎2), 平野 照之3), 内野 誠3)

1)済生会熊本病院脳卒中センター〔〒861-4193 熊本市近見5丁目3番1号〕
2)熊本市立熊本市民病院神経内科
3)熊本大学大学院脳神経科学講座神経内科

急性期脳梗塞患者において安静度拡大にともなう起立性低血圧(orthostatic hypotension:OH)の有無と徴候増悪の関係を検討した.対象は,2000年4月〜2001年3月に当院に入院し,病型が確定した脳梗塞162例.入院翌日より60度ギャッジアップ,座位,起立・歩行時に負荷直前・直後・5分後・15分後・30分後の血圧を測定し,OHと徴候増悪の出現頻度を検討した.またOH合併群と非合併群とで,患者背景,脳動脈病変に関し群間比較した.全症例中86例(53.1%)にいずれかの負荷段階か経過時間においてOHをみとめた.入院経過中に徴候増悪は22例(13.6%)にみとめたがこのうち安静度拡大負荷にともなう徴候増悪は2例(1.2%)であった.早期離床にともなうOHは高頻度だが症候性のものはまれであり,早期離床が有害であるとはいえないと考えられた.

(臨床神経, 45:279−286, 2005)
key words:脳梗塞, 起立性低血圧, 早期離床, 安静度拡大

(受付日:2004年4月2日)